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思ったことを歌にしたり、書きとめたり、しています。

『ボーカロイドの歌に、耳をすませて』

なんだか気取ったタイトルにしてしまいましたが、2015年のボカロ曲5選です。

熱心なボカロリスナーの間では、自分の好きな曲を「年間10選」として選ぶという文化があります。でも、聴いたことのない音楽をそれだけ聴くのって、けっこう大変なんですよね(ちゃんと聴こうと思ったら)。なので今回は、ボカロ曲をふだん聴く習慣がない方にも聴いてもらいやすいように、「5選」というかたちにしてみました(その方が選びやすかったというのもありますが)

なお選曲基準は、「自分にとって特別な音楽である」ことです。それでは、さっそくめくるめくボカロ曲の世界へようこそ!


gurupon「SEASON」

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ラテン調のリズム(より細かくは「レゲエ」というそうですが)にのせた、しっとりとしたバラードです。楽しげな調べのなかに、ゆたかな情感とひるみない意志が感じられ、人生とはかくあらねばならないと思わされました。

「水平線の 果てにゆこうと思うから」

 ご存知の通り、「初音ミク」とはVOCALOIDという音声合成ソフトにすぎません。しかし彼女のために作られた楽曲を、彼女が丁寧に歌いあげるとき、そこには一つの精霊が存在して、聴くものに寄りそうように感じられるのは、なぜなのでしょう。彼女の歌う素晴らしい音楽に出会うたびに、そんなことを考えたりしています。


betcha「あわいに在りて望みしは」

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アバンギャルドポップとでもいえばいいのでしょうか。これほど個性にあふれていながら、それでいて究極まで「ポップ」というものを探求した音楽を、自分は寡聞にして知りません。初めてこの楽曲を聴いたときは、ずいぶん難解だなあと思った記憶があります。でも、その音色に惹きつけられてか、くりかえし聴いているうちに、至福の音楽空間にいることが、しみわたるように感じられるようになりました。

「降り出した雨をつき 光さすところは 未来」

それにしても「ポップ」という音楽を、なぜ人はそれを「ポップ」だと感じるのでしょうか。そこには、人の「精神」に隠された秘密があるようにも思います。そして、それはもしかしたら「宇宙の神秘」なのかもしれない。そんなことすら連想させられる、素晴らしい音楽です。


自由落下「私の水槽」

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「VOCALOID深海入り」というタグをご存知でしょうか。このタグがつけられる楽曲の主題の一つには、「深海(のような底知れぬところ)」に落ち込んでゆく「人/存在」があります。マジカルミライの定番曲でもある「深海少女」なんかが、有名ですよね。そしてこの楽曲は、そのテーマ性と真っ正面から向かい合った作品です。

「君のいない世界で 幸せは望めない」

なくてはなならないものが、失われてしまった世界で、人は生きることができるのだろうか。この音楽を聴いていると、そんなことを考えてしまったりします。もしそうした境遇に落ち入ったとしたら、その人を救いうるのは、「絶望」を美しい結晶へと昇華してくれる、こうした「作品」だけかもしれません。それだけの力の宿った音楽が、ここにあります。


イズレ「Refrain」

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これも「離別」をテーマにした楽曲です。失ってしまった人を偲ぶ「日常」が、そのままあてどない「空想」へとつながってゆく。このあまり相容れない両者を、なんの不自然さもなく結びつけ、描ききった表現力にはただ感服してしまいました。

「少しだけおめかしをして 過ごした季節 持ってゆくよ」

あたり前ですが、人は「空想」のなかだけで、生きてゆくことはできません。それは逃避にすぎないのですから。だからこそ彼女は、惜別のために「紙ヒコーキ」を飛ばすのでしょう。ですが、彼女の想いもまた、紙ヒコーキとともに飛んでゆく... あたかも「生きる」ことを拒絶するかのように。切なくも、力強く、美しい音楽です。


anomimi「ミライをさがせ」

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最後は明るい曲で。かつて「電子の歌姫」と言われていた初音ミクは、今やあたりまえにリスナーの「日常」に住みついた存在となりました。そうしたボカロの現在地を、とてもよく表現している楽曲だと思います。

「今日が楽しめたら 未来も楽しいはずだよ」

ボカロにとって、当たり前のように「バズ」が起きていた時代はもう終わりました。それを「衰退」という人は、言うかも知れません。でもそんなことはどうでもよくて、ボカロと、ボカロPによる、こうした豊かな音楽があればそれでいいように思っています。


いかがでしたでしょう。とまれ、ここまでおつきあいいただき、ありがとうございます。またこの素晴らしい音楽を制作された皆さまにも、あらためて感謝したいと思います。ありがとうございました!