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思ったことを歌にしたり、書きとめたり、しています。

『僕とボーカロイド』

あけましてという季節はとっくに過ぎてしまいましたが、2016年のボカロ曲5選です。『僕とボーカロイド』なる表題にしたのは、この記事を読み・この5曲を聴かれてしまうと、「僕」という人間がどういうことを感じながら生活をしているのか、隠しようがなくなってしまう。いうなれば、僕の骨髄にまで染みわたってしまったボカロ音楽だからです。

御託は無用。それではさっそく聴いてみてください!


anomim「雨女」

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 何者にも束縛されないほど自由であり、リピートする者には感化を与えずにはおかないほど洗練されている、素晴らしい音楽です。

「なんだか笑ってしまった 好きになってしまった」

ありきたりな毎日を、当たり前に生きながら、こんなにも洒脱な心情でいることができる。それはまた他者を束縛することもない。さっぱりした温もりがある。人はこんなふうに生きることができるんだと、思い出させてくれる。ポップの精神を体得した人でないと、こんな音楽が作れるわけもない。もう1曲目から脱帽ですね。


tama「スイミング」

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 朦朧とした意識のまま、おもわず人恋しくなってしまう、ひと夏のポップミュージック。

「泳げないよと言った 君の手をとった 誰かを 探した」

人は孤独でありながら、孤独でないような錯覚をしてしまうし、また好き好んでそうしたがる存在でもある。その錯覚を、あけすけに否定するのではなく、そのまま切りだして描ききった。こんな素晴らしい音楽が生まれてしまったのも、それはきっと暑さのせい、かもしれません。間違いなく「日本の夏のポップミュージック」史に、刻み込まれた名曲でしょう。


クロワッサンシカゴ「東京バレエ」

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 うねるようなベースラインと軽やかな上音が演出する、重みがある浮遊感のポップチューン。

「この街で生まれて 土に帰るまで 飛んでけ」

大都会にあてどなく、風まかせに生きてゆくかのようで。それでいて地に足がついたふわふわ感。軽やかに生きようという、鞏固なまでの意志が、あるいは遠くの雷鳴のように聴こえてくるかもしれない。一見すると相反する二つの感覚が、一つの音楽に見事なまでに落とし込まれた、またとない日常のBGM。


小菅こんにゃく「コンポジットコンポジション」

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 ボーカロイドをモチーフに、他者との関係性を主題に、ゴージャスに鳴りひびくバラード曲。

「分かち合う 接触点は すれ違ったままで」

音楽としての素晴らしさもさることながら、楽曲にちりばめられた数多の言葉たちが、人の内面にちらばった幾多の感情をつぎつぎと拾ってゆき、一つの大きな像をむすんでゆく。その演出のスケールは、圧巻というほかない。たしかに人は孤独であるにせよ、適度な距離感で惹かれあう他者が存在すれば、それは間違いなく幸福なことなのだ。文句なしの2016年VOCALOIDイメージソング大賞です。


sea-no「幸せの飛行列車」

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すりきれた心身に染みわたるような、 癒しのミクトロニカ。

「そして朝は もう明けない空へ 加速してゆく」

人生とかいう長いようで短いような道中で、いつのまにか背負っていた重荷をおろし、肩の力が自然と抜けてゆくような音楽です。もし「終わり」というものが、これほどにロマンチックであるならば、それは希望でもあるのかもしれない。他者が存在したという、はかない「記憶」だけを道連れにして。 


 

  ......いかがでしたでしょう。

日々多くのオリジナル曲が発表されつづけているボカロという文化にあって、リスナーであっても「この曲が好き!」で自己表現ができるというのは、まるで「空気」のように当たり前に感じてますが、よくよく考えてみると実にありがたいことですね。素晴らしい音楽と制作者の皆さんに、ありがとうございます!!!

僕にとって特別な音楽が、あなたにとってもそうであるならば、幸いです。